自由研究 ドール好きは色移りから解放されるか?
1 はじめに(お急ぎの方は読み飛ばして2へどうぞ)
DD やオビツなどのソフビドールを扱っていると、色移りの恐怖から逃れることができません。
特に、赤、黒、青、紺などの濃色、他にエナメル、フェイクレザーなどの材質の衣装からは、それを染色している色素が、ソフビに含まれる可塑剤と化学反応を起こして、ソフビに沈着してしまいます。色移りは、色が付着したのではなく、化学反応によって沈着しているため、アルコールやシンナーなどの溶剤を用いてふき取るということができません。この非常に厄介な現象から、我々ドール好きが解放されることはないのでしょうか?
色移りしてしまった場合の対処について、一般的に次のような方法が紹介されています。
もっとも代表的なものを上げると、
1 リムーブジットやドリームレスキューなどの専用の洗浄剤を使う
2 木工ボンドパックを行う
3 より強力な溶剤で溶かす or 目の細かいやすりで表面を研磨する
等が挙げられます。ただ、これらの方法にはいずれも弱点があることが知られていて、1はソフビ自体を変性してダメージを与えることがある、2は効果が薄い、3は素材に物理的変更を与えるので与えるダメージが大きい等の点が指摘されています。
もっとも1については一定の効果があることが様々ところで実証されています。しかし、そもそも当該の薬剤の入手性が悪いという問題もあり、なかなか十分に普及するに至っていないのが現状です。
では、われわれドール好きは、日々色移りにおびえながら、恐々としてドールライフを送るより他ないのでしょうか?ひたすらに濃色を避け、素材を吟味し、目の前にある魅力的なドレスを着せることをあきらめるより他ないのでしょうか?それは非常に残念きわまりないのです。
実は、上記1~3の他にも、色移りした色の除去・洗浄方法として、塩素系漂白剤を用いた方法があります。いわゆる「ハイター湿布」などと言われる方法です。
パパは、これまでに3度大規模な色移りを経験したことがあり、そのうち2回はこの塩素系漂白剤を用いた方法によって解決をしてきました。幸い、そのときは成功し、言わなければわからないくらいに色移りを除去することに成功しました。3回目は、あまりに色移りの規模が大きいので、処置をあきらめました。(今回実験に使用する旧ユキノボディというのがそれです)
さて、塩素系漂白剤を用いた色移り対処法は、実のところどのくらい効果があるのでしょう?
また、どのような弊害、副作用があるのでしょうか?
今回は、ちょうど手元にテストのためにうってつけの色移りを起こした素体があったので、塩素系漂白剤を用いた救助方法にどれくらいの実効性があるのか検証してみることにしました。
特に、塩素系漂白剤を用いる際の弱点として指摘されることとして、
A 色移りが起こった直後に処置するのでなければ効果がない
B 現行(2014年頃以降)の素体・素材には効果がない
C 地の色まで脱色してしまう
という点が指摘されていますので、塩素系漂白剤の有効性それ自体の他に、A~Cについてもあわせてしらべてみることにしました。
2 実験の準備
まずは、今回実験する素体とその状況についてです。
Ⅰ 被検体① ユキノのボディ(DDdy・ノーマル・2011年製)
ⅠA 赤丸 2014 年発生 蛍光ピンク 色移り後約 2 年経過
ⅠB 黄丸 2016 年発生 黒 色移り後約 24 時間経過
Ⅱ 被検体② キュリオのボディ(DDS 一体型・ノーマル・2016 年製)
赤丸 2016 年発生 濃紺 色移り後約 40 日経過
Ⅲ 被検体③ 昔のユキノのボディ(DD・ノーマル・2009 年製)
赤丸 2011 年発生 黒 色移り後約 5 年経過
今回は、これらの色移り箇所が、塩素系漂白剤による処置によって、どの程度状態が改善するかについて調査します。ぶっちゃけ、5年経過した色移りは相当に拡散(色移りがソフビ内部でさらに進行して、表面からより深い層に色が移ること)しているので、除去するのは難しいかもしれませんが、とにかくチャレンジします。
用意するのは、キッチンペーパー、ハサミ、小皿、ラップと塩素系漂白剤です。
キッチンペーパー…塩素系漂白剤を浸潤させて、湿布のように患部にあてがいます。
ハサミ…キッチンペーパーを患部に大使て適切な形・大きさに切るのに使います。
小皿…塩素系漂白剤を入れるのに使います。
ラップ…乾燥を防止するために、キッチンペーパーをあてがった部分を覆います。
塩素系漂白剤…本実験の主役です。必要なのは『塩素系』です。同じ商品名のハイターでも『酸素系』では効果が見込めないので注意してください。(『酸素系』はソフビの黄変を直すのに効果があると言われています。)
※処置を行う場合の重要な注意!!
・作業する場所にはなにかしらの敷物、できればビニールやプラスチック製のものをかならず敷いてください。塩素系漂白剤の脱色能力は極めて強力なので、色柄のついた布製の敷物に液が付着した場合、その個所の色素が容赦なく脱色されます。また、布そのものがメッシュのようにぼろぼろになります。布製のものを敷くときには、捨てても惜しげのないものをかならず使用指定ください。
・作業中は捨ててもいいような服で、できれば白いものを着てください。衣服に液が掛かった場合、その場所の色は容赦なく脱色されます。パパは黒い
T シャツを着て脱色作業をしていて液がかかり、その部分だけ色が抜けて黒が赤茶色に変色した経験があります。
・メディカルグローブを着用してください。塩素系漂白剤を素手で触ると手指の表面の肌が溶けます。流石に指が溶けてしまうような恐ろしいことにはなりませんが、あとでピリピリして結構痛いので、かならずメディカルグローブかビニール製の手袋を着用してください。液がしみこむような布製の手袋では意味がないのでご注意ください。
・ボディから「必ず」ヘッドは外すこと!ヘッドに発生した色移りに対して施術するというのでもないかぎり、安全のために、絶対にヘッドは取り外した状態にしてください。塩素系漂白剤の漂白力は強力なので、メイクにかかった場合、容赦なくメイクの色が抜けます。チークなどはひとたまりもありません。一滴かかっただけでもダメです。十分に注意してください。
・換気の良い場所で作業してください。施術中猛烈な塩素のにおいに見舞われます。発生する気体自体は単体塩素のような猛毒ではありませんが、本当に臭いがすごいのですし、長時間接触することは絶対に身体に良くないですから、作業中はとにかく換気を良くしてください。なお、塩素のにおいが素体に残りそうな不安がありますが、塩素には脱臭作用もあるため、液が完全に乾燥してしまえば臭いは全く残りません。
3 実験の方法と手順
①塩素系漂白剤を小皿に適量注ぎ入れます。
②キッチンペーパーを患部の大きさに合わせて、適切な大きさにカットします。
③カットしたキッチンペーパーを小皿の塩素系漂白剤の液に浸します。
④キッチンペーパーが湿布状になったら、患部に密着させます。このとき、ただ患部を覆うだけでは効果が薄いです。キッチンペーパーが幹部の表面にぴったり張り付くようにします。
⑤キッチンペーパーの上から、ラップで患部を覆います。
ユキノのボディは腹部と右腕に処置を施しました。
キュリオはももの部分です。
旧ユキノボディはももと足首です。
⑥この状態で、1日~2日放置します。
ただし、やりすぎが地の色の脱色をも引き起こしてしまう恐れが考えられるので、6時間おきくらいに状態を確認するのがよいでしょう。そのときキッチンペーパーが乾燥していたら、塩素系漂白剤に再度浸してから、患部に貼り戻してラップをした上で様子を見ます。
黒の場合、時間の経過に従って、黒→赤茶→赤→消失という段階を経て除去されていきます。
経験上、同じ黒でも、黒→紺となる場合は、そのあと時間をかけても消えにくい感じがあります。
さてさて、実験は成功するでしょうか?また、成功したとして、どのくらいの期間が経過した色移りにまで効果があるのか、地の色を抜いてしまうようなことはあるのか、はたまた、2014
年頃以降の新しい材質には通用しないのか、そのあたりを検証したいと思います。
今回の実験では、一応、数時間おきに状態を確認しつつ、最大 48
時間程度を経過した時点で、効果の有無等を判定することにしたいと思います。
2016.08.01 Mon.
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